一、日米関税交渉とコメ問題について
〇日米の関税交渉におけるコメの扱いについて伺います。まず、石破総理がこの間発言されたことについて、内閣としての見解を確認します。
石破総理は5月11日放送のテレビ番組「日曜報道THEPRIME」の中で、コメに関し「すぐに国内の生産量を増やせないのであれば、輸入を増やすというのも一つの選択肢だ」と発言されました。この意味するところは何か。また関税交渉において「米国からコメの輸入拡大が選択肢となりうる」ということを意味するのか、お答えください。(赤澤大臣)
〇ご説明は受けとめます。ですが、供給不足に対処する手段として「米国産コメの輸入拡大は選択肢である」ということを言われたのは事実ですよね?総理の発言は、農業関係者の不安を搔き立てたということは指摘しなければなりません。総理が一度発した言葉の重みは、私としても重々承知しているが、ぜひ丁寧な説明とともに、長官からも誤解を招かないよう、適時適切な補足発信をするべきと考えますが、いかがですか。(官房長官)
〇次は、5月12日の衆議院予算委員会での総理の発言に関して、「主食米の輸入拡大をする場合でも、ミニマムアクセス制度の枠内で検討する考えを示した」との報道がありました。ただ、私も議事録を見返しましたがはっきり分かりませんでした。そこでお尋ねしますが、この報道を踏まえ、事実はどうなのか、政府としての明確な答弁をお示しいただきたい。(赤澤大臣)
〇改めて長官に伺います。関税交渉の直接の担当は赤澤大臣であり、農政の責任者は農水大臣であり、いうまでもなく政府の最高責任者は総理ではありますが、各閣僚間の意思疎通を図り、仮に齟齬があれば調整するのは官房長官の職責と私は認識しています。与党との関係を長セするのも、もちろん長官の責任だと思います。
農水大臣は「コメを譲る気は全くない」との趣旨の答弁を参議院予算委員会で述べている。自民党の森山幹事長も「コメの輸入拡大の話はない」との発言を公にされています。しかし他方で赤澤大臣は15日、JA全中の会長に対し「守るべきものは守り」と曖昧な答えをされている。総理のご発言の真意も今ほど確認させて頂きました。
誤解なのかどうか、報道ベースではMA米の枠内での拡大が検討されているとの憶測が広がっている状況にあります。
この状況は、国民から見れば、あるいは農業関係者から見れば「閣内の見解の不一致」、あるいは意図的に政府がのりしろを残し、事実上コメをテーブルに載せている。そう受けとめられてもやむを得ないのではないですか?こうした見方が事実でないならば、官房長官としてこうした状況を調整し、発信内容の統一を図るべきと考えますが、現時点での政府の正式な立場について、長官から明快なご答弁をお願いします。(官房長官)
〇次の質問に移ります。
今月8日、真っ先に成立した米英の2国間合意に関して伺います。この合意には、牛肉について、米国が設定する低関税枠6万5000トンのうち、1万3000トンの英国枠を設けるとの内容が含まれています。ちなみに、この低関税枠全体には日本も含まれます。
ただ、英国にのみ特別枠を設定するこの合意は、WTOが加盟国に求める最恵国待遇に抵触するおそれがあるのではないですか?見解を伺います。(政府参考人)
○では、わが国のMA米の枠内での米国からのコメ輸入拡大についてはどうでしょう。資料①をご覧ください。わが国はTPPにも加入していますが、米国に優先枠を設定することが、TPPやWTOのルールに抵触するおそれはありませんか。見解を伺います。(政府参考人)
更問)TPPとしては規定していませんが、WTOのルールがあるので、これに抵触するおそれがある、こういうことでいいですね?(頷かせる)だとすれば、報じられるようなMAの枠内で米国の優先枠を設定するようなことはできない、こう理解してよいですか。(政府参考人)
更問)これはすでにあるWTOルールの確認です。答えないのは不誠実であり、都合の悪いことが隠されていると国民は受けとめますよ。はっきりお答えください。
〇では角度を変えて聞きます。米国を指定した優先枠ではなく、主食用米というカテゴリーを設けることで、事実上、米国産米の輸入拡大を図るようなことを検討される可能性はありますか。また、これはWTOルールに抵触しますか。
政府として、このような対応もありうるとの立場なのか、明確にご答弁ください。(政府参考人)
〇もうひとつ、総理の発言について伺います。総理は、世界に先駆けてトランプ政権との交渉に入るにあたり「ウィンウィンの関係を築く」との主旨の発言をされていて、例えば赤澤大臣に対しても「日米双方がウィンウィンになるような形を模索してほしい」と指示したとの報道もありました。4月21日の参院予算委員会では、日米が「相互補完というか、ウィンウィンの関係を築きやすい」との答弁もあります。そこでお尋ねしますが、政府の考える「ウィンウィン」とはどういうことなのか、ご説明ください。(赤澤大臣)
〇念のため確認なのですが、今回の協議にあたって、2019年に発効した日米貿易協定にある「継続協議事項」が米国側からの根拠になるという指摘がありますが、米国側からそのような主張はありますか。(政府参考人)
〇今回の日米交渉は、米側から一方的に理不尽な要求をふっかけてきたものだというのが国民の理解です。私もそう思っていますし、それが事実だと思います。今確認したように、継続協議の扱いでもない。だとすれば、そのような要求から始まる交渉に、そもそも「ウィンウィン」などということが成立するのですか。トランプ関税を撤回させることは、理不尽な要求を下げさせ、ゼロに戻すだけのことです。その見返りに日本側が何かを譲歩する、これはウィンウィンではないと思いますよ。どうですか。(赤澤大臣)
→交渉の中身は聞いていない。トランプ関税を撤回させる、これはマイナスをゼロに戻すだけでありメリットにはカウントできないですよね、という当たり前のことを聞いています。ここを明確にしていただけない交渉のあり方には危惧を持たざるをえません。
第一次トランプ政権との日米貿易交渉でも、政府は国民に対し、「害虫対策でアメリカからトウモロコシを買う必要がある」などと突然言い出した前科もあります。米国との交渉が厳しいことは重々理解しますが、メリットでないものをメリットと国民をだますようなことだけは許されないことは指摘しておきます。
○もう一つ、仮に日本と米国それぞれ得るところがあるという意味のウィンウィンが成立するとしても、国内において、輸出産業のために食料安全保障を犠牲にするようなことがあれば、それはウィンウィンと言えないと考えます。総理も「自動車のために農業を犠牲にすることはいたしません」と強調されていましたが、国内でどの産業も犠牲にしない、その意味でのウィンウィンも必要だという点にも賛同いただけますか。(赤澤大臣)
〇最後に改めて、これは長官に確認します。ウィンウィンを目指すということは、農業を犠牲にしない、この受け止めてよいですね。そのうえで政府として、「米国からの主食用米の輸入拡大」を「選択肢の一つ」として保持しているのか、それとも「選択肢にすら含まれない」として明確に否定されるのか。官房長官から政府の公式見解を明確にお示しください。(官房長官)
二、備蓄米放出の課題について
○今週、5/11までの週の調査で、コメの平均小売価格が再び上昇に転じました。備蓄米の放出にもかかわらず、昨年の2倍を超える水準からさらに上昇傾向が続いており、国民の家計にとって極めて厳しい状態です。そこで農水省にうかがいます。農水省に対する備蓄米の放出、価格高騰に対する国民からの問い合わせはどのくらい増えていますでしょうか。(政府参考人)
価格高騰をおさえるべく実施中の備蓄米放出の課題には、私は大きく2つあると考えています。ひとつは「流通」、もうひとつは「価格」です。
○そこで、まず備蓄米の流通量について伺います。今回、流通の円滑化が打ち出されましたが、備蓄米の放出が開始されて2か月、価格以前に、いまだに備蓄米を店頭で見かけないという声が多いです。農水大臣は2月、会見で、だいたい一週間程度で卸業者に、そこからさらに数日から一週間で店頭に並ぶと言っておられた。しかし結果は、それから2か月も経って、いまだ店頭にほとんど届かないのが現状です。原因は何で、なぜこれほど読み違えたのですか。国民に分かりやすく、かつ端的な説明を願います。(農水副大臣)
〇こうした反省を活かし、政府は先週金曜日に「対策パッケージ」を発表しました。この中で、備蓄米の売り渡し先を集荷業者に限定する方針は変わっていません。しかし、全国的にも、私の地元ですら、なぜ集荷業者に限定したのかと頻繁に聞かれます。卸や小売に直接販売すべきだ、集荷業者が利益団体だからではないか、という声も一部にあります。販売対象を集荷業者に限り、今回も変更しない理由は何でしょうか。(政府参考人)
→その趣旨は私も是としますが、集荷業者が必要以上に悪者になっている。政府はまず、しっかり理由を説明すべきです。
そして、流通しない原因を解明し、解消する責任も国にあります。「対策パッケージ」では、卸を通さず小売りに販売する枠が設定されましたが、これによってボトルネックは解消されますか。当初約束した半月で店頭に並ぶ状況を、今度こそ作れますか。(農水副大臣)
→(先ほども説明がありましたが)、これまで、トラックが足りないとか、備蓄米用の袋の生産が追い付かないとか、精米の遅れだとか、これが政府の説明でした。卸を介さず小売りに売ることで、なぜこれが解消されるのか。ボトルネックが解消され、近く店頭に備蓄米が潤沢に並ぶと国民は本当に信じていいのか。
〇長官にお答えいただきたい。この期に及んで対策はしたがどうなるか分からないでは、国の統治能力そのものが疑われます。今回の備蓄米放出は、災害時の放出方法とほぼ同じスキームを使っているはず。政府は「非常時にも、店頭で買えるまで数か月耐えてください、約束できない」などと言うつもりですか。
国民はもう待てません。まもなくコメは潤沢に店頭に並ぶと約束されるべきであり、そのために総力を挙げてきたのですよね。理由のいかんを問わず、政府は結果責任が問われるところまで来ていると思いますよ。長官どうですか。(官房長官)
○次に備蓄米の価格についてうかがいます。まず、米の価格とくに備蓄米の価格が下がらない原因を集荷業者に求める声があります。これは事実なのか、集荷業者が備蓄米流通でどの程度の利益を取っているのか、政府の見解を伺います。(政府参考人)
〇平年のコメ流通時のマージンと比べても、むしろ控えめな数字であり、利益を取っているのは集荷業者ではない。では、そもそも、政府が備蓄米を買い付けた価格は、令和6年、5年、4年それぞれいくらですか。(政府参考人)
→令和6年度は非公表とのことですが、1万千から2千円程度とされます。精米歩留まり込み5kg価格にして1100円程度。令和5年産の相対取引価格は1万5千円程度(15313円)であり、農家も特に利益を得ていない。
他方、先日の政府の資料では、備蓄米の店頭価格を3500円程度としています。では、特に利益を得ているのはだれか、ご説明頂けますか。(政府参考人)
〇この点、農水省は3月と4月に卸業者に対し要請をしてきましたが、効果が出ていないからこの数字なわけです。できるだけ高く売るのは卸業者として当たり前です。今後はマージンを公表するとのことですが、ここはそもそも対策を取らなかった国に責任がある。この点を間違えてはいけないと指摘します。
そのうえで、卸売業者に過大な利益を得させることは本旨ではないことを踏まえ、卸業者の利幅を適正化するよう、国としてきちんと結果を出すことを強く求めますが、見解を伺います。(農水副大臣)
〇もう一つ、そもそも備蓄米の売り渡しが入札で、高値落札で国が儲けている。これは、なぜ入札だったのか。現状はある意味非常事態であり、随意契約とすることも可能なのではないでしょうか。備蓄米放出にあたり、この点のご検討はされましたか。(政府参考人)
→資料をご覧ください。たしかに国有財産の処分は、会計法29条により原則として入札とされます。しかし同条には4項、5項に随意契約にできる例外の定めもある。予決令99条に「随意契約によることができる場合」も列挙されている。単に、「基本的に競争入札」というだけでなく、どのような事情で随契ができないと判断したのか、具体的にご説明を願います。(農水副大臣or政府参考人)
〇先ほど指摘したように、国の備蓄米買い入れ価格と落札価格の差額が国庫の利益となっています。概算でいいので、ここまでの放出量31万トンで、国はどのくらい差益を得ているか答えられたい。(政府参考人)
→国民が高いコメに苦しむ一方で、国がこれだけ利益を得る。官僚の皆さんでは、予決令の検討までが限界なのは仕方ないと思います。しかし政府としては、本当にこれでいいのですか。もう一歩踏み込んだ判断をすべきではないですか。予決令の改正、あるいは野党にも協力を求め法改正ということだってあると考えますが、政治判断ですので長官にご所見を伺います。(官房長官)
→これまでの米価の価格高騰に対する政府の感度の低さ、スビード感のなさに、国民は苦しみ、強い怒りを感じている。政府は真剣に受け止めて、ここからはスピード感を大事にしていただきたい。これから毎月、10万トン備蓄米の放出を続けるわけですが、さらに一ヶ月、二ヶ月たっても状況が変わらないということは許されないと考えます。改めて、速やかに成果を出すことを求めます。
三、コメの再生二期作について
〇資料③をご覧ください。一昨年、日本農業中央研究機構から世紀の発見がありました。稲の切り株、収穫した後に残った切り株からもう一度穂が出ているのです。秋の収穫のとき、地上40センチのところで切ってそのままに水をやったり肥料をまいたりすると、もう一度穂が出る。再生の力を利用してもう一度収穫できるなんて誰も思いつかなかったことです。みんな目にしながら、何千年も誰も気づかなかった。
○農水委員会ではありませんので、細かい課題や支援についてはここでは問いません。ただここで、この技術について取り上げるのは、年度の途中で2回目の収穫が可能になるというメリットがあるからです。いまは年一回限りの需要の見通しと作付けの計画に基づいて生産しているので、修正が効かない。しかしこの仕組みを使えば、年度途中での増産対応が可能になるわけです。品種の選定や二期目の収量拡大などでまだ改善すべき点もありますが、ぜひ研究、導入に本腰を入れるべきではないでしょうか。長官の見解をうかがいます。(官房長官)
→この再生二期作は、大発見であると同時に大問題だということを忘れてはなりません。しかし、私は、やれるものならやるべき。わかっているのにやらないことは、それこそ資源の無駄遣いだと考えます。夢を持った農業再生の基盤となりうる。きちんとした政策構想を打ち出して夢を持った農業に政府としてつなげて頂くようお願いします。
(おわりに)
1999年食糧農業農村基本法策定の時の座長をされていた祖田教授が今年一月にお亡くなりになられました。昨年末、まだ価格高騰がいまほどでなく、備蓄米の放出のめども立っていなかったときに、先生が言われていた言葉がありますので紹介します。
いかに日本の農業が大事でも、消費者が安い方に流れるのは仕方のないこと。いまは円安もあって外国のコメも高く、消費者は日本のおいしいコメを求めるため、これも価格高騰の原因になっている。このあと、トランプになったら、日本の農業も農村もむちゃくちゃにされるおそれもある。
この後、これを機に高く売ろうとする動きが心配である。農業にとって高く売ることも大事だが、揺り戻し、反動がおそろしい。長期的に見たら、高くなったり安くなったりするものだが、いざ戦争になったり凶作になったりしたら大変なことになる。こうした変動が起こりうることを先読みした対応をするとともに、しっかり国民に説明、発信しなければならない。
価格の今の高騰、そしてこのあとのこと。この点について、まさに先読みした対応、国民への説明ともに足りていないと思います。ぜひこの言葉を胸に刻み、「国民に今、どういう言葉を伝えていくか」を意識して頂きながら、今後の対応をお願いしたい。